



大興運輸倉庫様が所有する都内の倉庫に空きができた。築10年と比較的新しく、立地も 問題ない。テナントを誘致するのは、難しくない。それが、てんやわんやの騒ぎの始まりだった。 新たなテナント候補に決まったのが、D&Nコンフェクショナリー株式会社様(旧社名: 株式会社マドレーヌコンフェクショナリー様)ケーキなどの洋菓子メーカーだ。諸事情に より、都内にある工場の移転が必要になり、新たな場所を探していた。
倉庫から工場への改修が必要になる。それに大興運輸倉庫様は、難色を示した。工場への 改修には、大がかりな工事がつき物。倉庫に穴を開けるなどする。 一方で、施設への投資が大規模になることで、一度テナントとして決まれば、長期に渡り テナントとしては腰をすえることになり、他の荷主・テナントと比べれば、長期的に安定した賃料を見込める。 そのメリットを理解しながらも、工場への改修を行ったことのない大興運輸倉庫様には、一抹の不安が付きまとっていた。
大興運輸倉庫様の不安を解消するためにも、話し合いには当社も同席。工場としての慣習
と倉庫の慣習で意見の食い違いが出るのを、ひとつひとつ解決していった。
特に、管理を行ううえで、大量の図面が必要になった。これは、倉庫と工場の異なる点で、この部分は慎重に進めていった。
例えば、工場では水を大量に使う。そのため、配管を倉庫内に巡らせる必要があった。
配管が邪魔にならないように、床に埋め込む作業が必要。既にある床に管を配置し、上からコンクリートで固める。
もし、問題があった場合を考え、配管図を提出してもらった。原状回復するときに必要な状況を写真で残していくことも忘れてはならない。
工事の図面などがそろい、両社が合意をした。あとは、工事を行い、稼動を待つだけ。
工事現場には週二、三回通い、工事の進捗状況を確認するだけだ。ほっとしていたが、呼び出しの電話が鳴り止まない。
大興運輸倉庫様に呼び出されて、工事現場に行き、がく然とした。図面どおりに工事が進んでいないのだ。
あれだけ、話し合いの時に、図面どおりに工事を行うと言っていたのに。しかし、工事を施工する会社にも言い分はある。
「実際に工事を進めると、よりよい方法が見つかった。だから工事の予定は変更した」
倉庫のオーナー様としては、「大事な倉庫。それに穴を開けるだけでも、身が切られるような思い。
それが、予定以外のところに穴を開けるなんて」とカンカンに怒られていた。
契約内容や、原状回復への問題などを説明し、工事を予定通りに行うことにご納得頂いた。
しかし、その後も何度となく、土日も関係なく呼び出しがあった。そのたびに駆けつけた。
テナントとしては、工場として使いやすいように、ちょっとした工事を行う。「ちょっと
だから大丈夫だろう」。それが契約違反となる。
こんなことが繰り返されれば、今後の両社の関係にひびが入る。何度となく説明をして、
最後には倉庫の慣習に慣れてもらった。
商慣習・文化の違いの恐さを、身をもって体験した。
今回の工事では、オーナーの大興運輸倉庫様からも、テナントのD&Nコンフェクショナリー
株式会社様、工事の施工会社様からも厳しい意見が出た。
お互いの慣習で話をするため、意見が合わない。もし、三社が直接話していれば、衝突が起こり、
契約もご破算になったかもしれない。
第三者である当社が間に入って話をしたことで、お互いの意見を率直に聞くことができ、譲れる部分、
譲れない部分を判断した。それが、早期の解決につながった。
現在は、無事に洋菓子工場として稼動している。中に入るには、白衣を着て、アルコール消毒も
行う。製造ラインがあり、冷蔵庫も置いてある。二階には、間仕切りを使い、応接室、事務室も。
外を見れば、換気のダクトがある。
オーナー様に安定テナントを紹介できたという達成感・安心感が残った。ただ、外に大きく出た
ダクトを見ると壁に穴を開ける、開けないで揉めた工事を思い出す。



